2009年07月01日

もっとおもしろくても理科

「もっとおもしろくても理科」清水義範 著  西原理恵子 絵
清水博士が理科のお勉強を笑いながら楽しく伝授する本。挿絵をハチャメチャな漫画家サイバラが入れる。
10の項目(進化論やロケットやビッグバンなど)があるけれど、中でも[遺伝子とDNAと生物たち]が、面白かった。

遺伝子については、理科の授業で興味深く習った記憶はある。XYとXXの関係ですよ。
DNAについては、最近犯罪の決め手にするのになくてはならないものになっているけれどよく分からない。「重力ピエロ」にも詳しく説明されていたけれど仕組みは難しい。
遺伝子とDNAの関係は、この本の解説によると、「染色体の中にDNAがあり、DNA中にある遺伝情報を伝える単位の一つ一つが遺伝子であるらしい」ということであるらしい。

もっとも清水博士自身は理学博士ではなく、本人勉強しながら書いているエッセイだから、一緒に「へ~ぇ。そうなんだ。」と冗談を聞きながら楽しくも深く学べるのであった。
サイバラ画伯はもうさっぱり分からんというノリで、ナンセンス漫画を挿入し思考を撹乱させ、真理がなかなか理解出来ない私を安心させる。

「DNA検査により犯人で無いことが実証された」あるいは「犯人であることが実証された」とよく言われるが、理屈もあいまいなまま納得していた自分を恥じた。
考えてみれば、賢いお人がおっしゃることに間違いないと、物事を鵜呑みにするのも危険なことでもありツマラナイ事だったなと思った。

これからは、物事の真相に迫る思考回路をもつよう頑張ろうと少し思ったけれど、物事をあいまいにするタチの私には出来ないだろう。

2009年06月22日

光る海

「光の海」 津村節子 著
津村節子の小説には、ひたむきにしたたかに生きる女性の姿が描かれていることが多い。
いずれにも困難を乗り越えて淡々と生きぬく女性の姿がある。
「光る海」には、そんな10の短編小説が収まっている。
どれも「死」が人生の重要な転機となっているようだ。

長年、家族のために一心に生きてきた雪江は、夫の死によって初めて自分の自由な時間を持つことが出来、74歳になって家族に気兼ねなく自分のしたい行動を起こし、<光る海>の輝きと幸せを感じ取る。

片や私は、家族のために奉仕(?)をする専業主婦であったけれど、自分の自由な時間をもち自分がしたいことをしてきたので、たとえ夫が死んでも、雪江のように<光る海>のようなきらめく光を全身に受け止め感動することは残念ながらないでしょう。
かといって<暗い海>に沈みこむことも絶対考えられないけど、、。


2009年05月23日

ブータンに魅せられて

ブータンに魅せられて  今枝由郎 著
チベット仏教研究者として長年ブータンと関わってこられた著者が、ブータン社会に貫く精神文化を通して、「真の豊かさとは何か」ということを教えてくれた魅力ある本でした。

ブータンはネパールの東隣に位置する人口60万人の小さな王国です。
ブータンは第4代国王ジクメ・センゲ・ワンチュックが提唱したGNH「国民総幸福(GrosNationalHappiness)」の理念を、国の一番重要な政策にあげているのでも注目を集めています。

GNP(国民総生産)で、国の豊かさを計るとなれば、ブータンのGNPは低くて貧しく、そのために「貧しい発展途上国」と位置付けされています。

この本を読んで「発展途上国」って失礼な言い方だと気付きました。ブータンは国の経済的発展や近代化より、国民の幸福度(充足度)を高めることを目指し、その点では世界に誇る先進国となっているのです。

ラリグランスクラブが関わっている隣国ネパールは、GNPも低くGNHも少ない。どうしてなのか?
私は第一にヒンズー教とチベット仏教という宗教の違いを挙げたい。第二は王(支配者)の資質・品格の差も大きい。

4年前ネパールに滞在期間中、3泊4日という短時間でしたが訪れたました。
地球上の最後のシャングリアと言われているそのままの素晴らしい国でした。
ラリグランスHP<http://laligurans.com  >の通信17号にブータン紀行を載せています。

あわせて読んでいただくとさらにブータンの素晴らしさ貴重さに気付かせてくれます。


2009年05月20日

イワン・イリイチの死/クロイツェル・ソナタ

「イワン・イリイチの死/クロイツェル・ソナタ」 トルストイ著
トルストイは19世紀を代表する作家の1人、ロシアの小説家です。徹底した反権力思想、非暴力主義者でした。
私は若いときに「アンナ・カレーニナ」「戦争と平和」など読み、暫く空白があって、子育ての時に、息子達が気に入っていた「おおきなかぶ」がトルストイの手によるものと知り驚いたことがあります。
そいてまたまた空白があって今回トルストイの「イワン・イリイチの死/クロイツェル・ソナタ」を読みました。

新型インフルエンザ騒ぎで家に軟禁状態のため、書棚から何時収めたかまったく忘れていたこの本を取り出したのです。

「イワン・イリイチの死」に書かれているのは、19世紀のロシアの1裁判官が迎えた「死」についてのお話です。
「クロイツェル・ソナタ」は結婚についての男女の愛についての話です。

国が違い、時代背景が150年も違っても、人間が生まれ死に至る道程は短く、その間に遭遇する人々の生活・恋愛・病・死で感じる喜怒哀楽には違いがありません。

さすがに歴史にのこる作家の著作だけあって、とっても面白く、私自身の生き方にも合わせられ考えさせられた本でした。

2009年05月18日

重力ピエロ

重力ピエロ  伊坂幸太郎 著
‘家族の愛は重力を超える!’
主人公は、泉水と春(どちらも英語で言えばスプリング)という兄弟です。
兄が泉水で遺伝子を研究する会社に勤めている。大学生の弟の春が、チョット神経過敏症というか訳あり性格である。
というのは、春は母親がレイプされて妊娠し産まれたという過去がある。
とても美人で素晴らしい母親は兄弟がまだ幼い時に病気で亡くなったが、やさしく理解のある父親の元で、平穏な愛に満ちた生活を過ごし成長する。
といっても、不幸な辛い過去は、家族にとって拭い去ることの出来ない事実であり、それは次男の春に影響を与えている。
性格は環境で形作られていくものなのか、又は親から伝わった遺伝子から逃れられないものなのか。
そのようなことが、一連の連続放火事件犯人を追う謎解きに乗り出す兄を通して明らかになって行く。

私のお気に入りの俳優・加瀬亨が主演で映画化されたので、映画より先に本をと思って読みました。
遺伝子の記号など結構理屈っぽいところが多々あるけれど、どのように映画化されたのか、映画を観るのが楽しみです。

5月23日封切り。それまでに新型インフルエンザはおさまっていれば良いのだけれど、、。

2009年05月12日

おくりびと

おくりびと 百瀬しのぶ 著 小学館文庫
アカデミー賞受賞映画「おくりびと」を、素直に物語りにした本である。

映画を観た人は、みんなそろって「感動した」と言っていた。
映画を見に行く機会を逃したので本を買って読んだ。

亡くなった人を、心をこめて送る仕事師である‘納棺師’のことがテーマである。
人の生と死を考えさせるテーマとしては、以前に紹介した‘悼む人’の方が数倍も深い。

でも観た人が口をそろえて言っていた映像の美しさはイメージできて楽しんだ。
「雪化粧された田んぼ、民家の屋根、連なる山々、そして白い雲。すべてがダイヤモンドを敷き詰めたようにきらきら光っている」
そして目に浮かぶは演ずる本木雅弘と山崎努、広末涼子。

映画から起こした本は、映画を超えませんね。
この映画の元になったという「納棺夫日記」という本を読んだ方がよかったかも。

2009年04月29日

自然と国家と人間と

「自然と国家と人間と」 野口健 著
著者は25歳で7大陸最高峰世界最年少登頂記録を成し遂げたことで話題になったが、それ以上に、エベレストや富士山に散乱するゴミの清掃登山に着手し、自然環境を守るアルピニストとして名を知られた存在である。
ゴミと戦ううちに、地球温暖化による自然破壊問題や、対応する国の違い、はたまた、いまだに帰国できない日本兵に遺骨にも遭遇し、残された時間は多くないと、精力的に行動を起こす。

急スピードで進む自然環境破壊に眉をひそめることは誰にでも出来る。自然破壊を食い止めるために1歩足を踏み出し実践することは、誰にでも出来ることではない。野口健は、まず行動を起こし、地道に賛同者を広めていく。
現場で実際に見て聞いて感じた深い思いをさらりと書き綴っている。
私はそんな彼の生き方を、心から尊敬している。凄いなと思う。

先日ネパールに同行した20歳のS君が、将来、地球を守るための働きをしたいと言っていたので、彼に読んでほしいと思った。

2009年03月30日

小説「聖書の女性たち」 

小説「聖書の女性たち」 木崎さとこ著 日本キリスト教団出版局
旧約聖書から新約聖書に出てくる女性たちのエピソードを、1編が原稿用紙8枚という短い小説(旧約24編・新約12編)に書かれた興味深い小説であった。

旧約聖書にまず出てくる女性は、言わずとしれたアダムのあばら骨から作られたというエヴァである。アダムを誘惑に陥らせ、神との約束を破って楽園を追われた人類の源、アダムとエヴァ。
でも、神との約束を守っていたならば、その後現在にまで延々と続く人類の歴史は存在しない。
あなたも私も存在しない。

旧約聖書では、「イスラエルの歴史に神がどう働きかけたか」という一貫したテーマがあり、それに添いながら子孫を残していく道程は、残酷ながら中々考えさせられる。
旧約の時代から男は、権力のみを求め、女は男が権力を維持するために子孫をのこす道具であった。男は道具としてしか又は欲望のはけ口としか女を扱わない者が多く思慮に欠けていた。女はそのような納得しかねる女の道をそう単純に受け入れていたわけではないのではないか。そのへんの思慮深い女性の深層心理が、とても魅力的にえがかれている。

初源の女性・エヴァ、聖母マリアと姉のエリザベト、そして圧巻はマグダラのマリアの話。
愛すべき聖書に出てくる女性達!

聖書を少しはかじったことのある方は、必読。
よくわからなかったアブラハムやバベルやサムソンなどの事情も、そうだったんか等と、納得できたりします。


2009年03月01日

田辺聖子の人生あまから川柳

「田辺聖子の人生あまから川柳」 田辺聖子著 集英社
俳句に凝ったことがある。
私の句は、川柳みたいと仲間によくいわれる。
冗談好きの私は、句に笑いをつい入れたくなるからです。
それじゃ川柳をひとつ、、となると難しい。とても5・7・5では人間心理のきわどさ等をユーモアを込めて収めきれない。
俳句は、季語を入れると、なんとなく句にまとまる気持ちになるが、川柳はそうはいかない。考えるうちにしらけてしまう。

「田辺聖子の人生あまから川柳」では、川柳好きの田辺聖子さんが丹念に選ばれた、古典というかもう6~70年以上も前の珠玉の川柳100句。
その中から、共感し思わず笑った句を5つ選びました。

*かしこい事をすぐに言いたくなる阿呆  亀山恭太(1927年生まれ 教師)

*このご恩は忘れませんと寄り付かず  大田佳凡(1907年生まれ 医師)

*西出口というたがなイヤ聞いてない  岸本水府(1892年生まれ 川柳六大作家)

*不細工な妻に子供はようなつき  後藤梅志(1894年生まれ  商店主)

*良妻で賢母で女史で家にいず  川上三太郎(1891年生まれ  川柳六大作家)

どれも、昔の句とは思えない、今もお茶しながらのおしゃべりに登場する身近な話題です。
この句を添えると、爆笑で盛り上がること間違いなしです。
この本には、あと95句も載っています。それぞれに田辺聖子の感想が述べられていて、それも又楽しい。
イヤなことも笑いに流せる術も学べます。
お笑い好きの方。一読のほどを!

2009年02月24日

悼むひと

悼む人 天童荒太著 文芸春秋社
「おくりびと」がアカデミー賞に輝いて、テレビでもその話で持ちきりです。

亡くなった人の体を清め、棺に納める仕事人納棺師を描いた映画だそうである。
私も友人が亡くなった時、葬儀の始まる前に納棺の儀式に立会ったことがあり、20代と思われる若い納棺師さんが、遺体に向き合い、荘厳で優雅な動きでことを運ぶのに驚いた体験がある。友人が丁寧に扱われよかったと思った記憶がある。
映画を観た人は、だれもが感動し、自分もこのように<おくられたい>し、愛するひとを<おくりたい>と思うそうである。

しかし、世の中、このように家族や知人に暖かく見送られる人ばかりとは限らない。
孤独死をする人、憎まれて殺されたり、闇に葬られた人々も大勢いる。
「悼む人」はそのことに気付いた1人の青年が、誰からも死を顧みられることもなく葬られた人を捜し求め、亡くなったという場所にひざまづき、その人をただ悼む、という話である。
どんな凶悪な悪人であっても、どんなに不幸を背負った人でも、一生に一度は誰かに愛され、誰かを愛した経験があるにちがいない、と青年は思う。
そんな人の死を悼みたいと思って、青年は旅を続ける。

映画「おくりびと」が華々しく話題を提供する中、「悼むひと」のことも同時に考えてみたいと思って紹介しました。


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